この記事は、
・剣の修理方法を知りたい。
・剣の作り方を知りたい。
こんな疑問を持った人に向けて書いた記事です。
剣の修理方法ってなかなか人に教えてもらってもすぐに覚えられなくて、復習したいって人多いかと思います。
また、中には間違った方法を教えられることも…
そこで、本記事をご覧いただき、正しい修理方法をマスターしていってください。
筆者(たーみょん)は学生時代に工学部で電気について学びながら、中学校のフェンシング部コーチをしておりました。
コーチとして2年連続フルーレ団体優勝経験もあります。
就職は大手総合電機メーカーの技術職に就きました。
以上のことからコーチとしての実績、電気回路の知識もあり、本記事の信憑性を高く持ってもらえると思っております。
修理方法
まず、エペ、フルーレ剣についての故障個所の探し方を記載いたします。
サーブル剣の故障は錆びと緩みくらいで容易にわかる内容なので、割愛いたします。
・ポイント(剣の先端)の確認
・ヒルト(持ち手)部分の確認
・ボディーコード接合部の確認
大体は上記順序で確認すると良いです。
上記3はサーブルも関係ありましたね。
ポイントの確認と修理
最も故障しやすい場所が剣の先端部であるポイントです。
審判機につないで先端部分を他の剣や足、手等ではじいてポイントに異常がないかを確認します。
また、ポイントヘッドやベース部分を押したり回したりしながら異常がないかを確認します。
エペの確認は分かり難く、突きながら確認するしかないです。
ちなみにベースは下図赤枠部分のことで、その上がポイントヘッドです。
また、試合前にはポイントの応力を確認する必要があります。
フルーレは500g、エペは750gの重りをポイントの上にのせても、審判機が突いたと判断しないようになっていなければならないです。
原因は概ね下記内容です。
・ポイント内部の汚れ
・ポイントバネ応力不足
・ベースのゆるみ
・ベースのへこみ
・接点バネの異常(エペのみ)
ポイント内部の汚れ
内部の汚れが溜まることで電気抵抗が上がり、通電しなくなり、正常な動作をしなくなります。
また、汚れているとさびやすくもなるので、注意です。
下記の順序で汚れを取ります。 写真はフルーレですが、エペもほぼ同じやり方です。
1. ブレードテープを外す
2. ポイントを押さえたままビス(ねじ)を外す(2個)

3. ポイントヘッドとバネをゆっくり引き出す。
4. ポイントヘッドとバネについた汚れをティッシュなどでふき取る(特に下図矢印の隙間部分。エペは接点バネの底辺部)
5. 錆びや取れにくい汚れは紙やすりで取り除く

6. ポイントベース内の汚れや錆びも上記同様にして取り除く
7. バネ、ポイントヘッドの順にポイントベースへ入れる。
8. ポイントヘッドを押しながらビス(ねじ)を取り付ける。
9. ブレードテープを貼りつける。
修理初心者が良くやる失敗は、
- ビス(ねじ)を外す際にポイントを地面から離して高い位置で作業をすることでビスを落として、なくしてしまう。
- ポイントヘッドを押さえ忘れてビスを外し、ポイントヘッドとバネを飛ばしてしまう。
があげられます。
一番多いのはビスをなくすことですので、落としてもすぐにわかるように、低い位置で作業をしましょう。
また、上記6のときにベース内部の底辺に強く力を加え回転させながら汚れを取り除くと内部のコードを切ってしまう可能性もあるので、注意です。
ポイントバネ応力不足
上記手順と同様にしてバネを取り出しバネの両端を引っ張って伸ばすだけでOKです。
伸ばしすぎに注意です。慣れない方はちょっとずつ伸ばして何度か試しながらすると良いでしょう。
ベースのゆるみ
ベースが緩んでいると正常に動作しません。
また、緩みすぎると内部のコードを切ってしまうことが有るので、注意です。
ベース部分の下の方につかみやすく平らになっている(なっていないものも稀に存在)部分とブレード(刀身)上部をペンチやプライヤー、モンキーレンチ等で持って締め付けます(下図参照)。
ベースのへこみ
ベース部分がへこんでしまうとポイントがスムーズに動かず、ひどい時には全く動かせない状態になります。
エペは分厚くできているので、ほぼへこみません。
へこんで狭くなった分を鉄鋼用ドリルで削って修理します。
フェンシング用品店で専用工具もありますが、高いので、鉄鋼用ドリルの代用でOKです。
フルーレは4.5㎜、エペは5㎜の径のものを使います。
接点バネの異常(エペ)
エペのポイントは、接点バネを使用して突きを検知するまでの可動範囲を調整します。
接点バネは短すぎても長すぎてもダメです。
また、調整のためにいじりすぎて接点バネが斜めになってしまっても正常動作しません。
- 審判機につないで正常に突きを検知すること
- ポイントにエペ用ゲージを挟み、ポイントを押しても審判機が反応しないこと
を確認する必要があります。
上図はエペのポイントヘッドです。
最下部にバネがついています。
このバネを伸ばしたり縮めたりして調節します。
調節はなれていないとかなり難しいので、正常なときはできるだけ触らない方が良いです。
ヒルト部分の確認
これに関してはあまりゆうことはないですね。
ヒルトと剣が緩んでいないかを確認します。
ヒルトとガード(つば)をもってひねる方向に力を加えて緩くないかを見るだけです。
緩い場合はT字ドライバー等でヒルト内部にある六角ナットを締めましょう。
ボディーコード接合部の確認
ポイントやヒルトのゆるみ等の異常がないことを確認した後にボディーコードとの接触不良を確認します。
主に剣を振ったり、ボディーコードをゆすったりして確認します。
ここでよくあるのは、ボディーコードの断線なのか、単なる接触不良なのかわからなくなることです。
なので、先にボディーコードの断線の有無を確認してからにした方が良いかと思います。
下図のように剣にさす方のプラグを剣等の金属でショートさせてキレてそうなコード部分を動かして確認します。
下図は2ピンがフルーレで3ピンがエペのプラグです。
エペとフルーレの剣の電気的構造は真逆になっていて、
- フルーレは回路が閉じていてポイントを押す(突く)ことでスイッチを開く
- エペは回路が開いていてポイントを押す(突く)ことでスイッチを閉じる
という構造になっています。
このような構造になっているので、エペの接触異常の確認は主にポイントを押した状態ですると良いです。また、エペは審判機よりもテスターでの確認の方が異常を発見しやすいです。
コードの断線ではないとなった時には、剣との接合部が緩い可能性があります。
下図はプラグのピンの部分の写真です。
図の矢印の先の隙間に精密ドライバーのマイナス等の薄くてかたいものを入れ、隙間を広げましょう。
こうすることで緩かった接合部がしっかりとします。
剣のポイントコード張り替え
修理ミスや初期不良等で剣のコードが切れてしまうことが有ります。
下記の順序で張り替えます。
1. ベースを外す。

2. コードを剣から取り除く。
3. 剣の溝を綺麗にする。(綺麗にするとコードが浮きにくくなります)

4. 新しいコードをベースに通す。
5. ベースを剣にしっかりと取り付ける。
6. コードを溝にはめる。
7. 剣最下部にコードを巻き付けて固定する。

8. 溝にボンドを垂らしてコードを貼りつける。

剣を曲げた状態で固定してから貼り付けです。
この状態は非常に危険です。
絶対に剣先付近に顔を近づけないでください。
ボンドは瞬間接着剤でOKです。
一番上からボンドを数滴たらすと溝に沿って流れ落ちていくので、
それが止まったら、止まったところからまた数滴たらす、を繰り返して下までボンドを付けます。
下の方のボンド付けに関してですが、巻き付けたコードにまでボンドが流れてくっついてしまうと最初からやり直しなので、残り1/4程度まで来たら、一旦乾かし、乾いたころで剣を上下逆にしてからボンドを付けると失敗しなくて済みます。
剣の作り方
とても分かりやすい動画があったので、下記紹介いたします。
英語ですが、映像を見ているだけでもどうすれば良いのかが良くわかるかと思いますので、ご覧ください。
フルーレ剣の作り方
注意点は剣のコードをソケットに取り付ける前に
コードの被覆(エナメル:絶縁性の塗料)を紙やすりで丁寧に(色が変わるまで)はがす必要があります。
動画では精密ドライバーで削り取るって荒っぽいことしてますが、紙やすりの方が確実です。
コードを取り付けるのはソケットの穴の径が小さい方(ガードと絶縁されている方)です。
また、動画でもちゃんとしているように、余ったコードの先は切り落としてください。
エペ剣の作り方
注意点はフルーレと同じです。
ただし、剣から出ているコードは2本です。
ソケットの穴3か所の内、間隔が狭い2か所に1本ずつ取り付けてください(真ん中とそれに近い方の端っこ)。
剣のコードにプラスとかマイナスとかないので、どちらにつけても大丈夫です。
サーブル剣の作り方
注意点は特にないです。
ポイントコードがない分、簡単です。
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